人類史 Black Panther | 終わらない資源戦争 Wakanda Forever
マーベル映画、アメコミ、キャラクターもの映画を見たことがない人もわかるレビューです。ストーリーへの言及はありません。映画から得た知見、人生観。今日も楽しく生きようという話です。
人生とは?
人間1回くらいは考えたことがあるのではないだろうか?
著者は考えようとしたことはあるが意味や目標を見いだしたことはない。
映画20作品分のヒーローが1つの映画に出てくるというお祭り映画。「Avengers Endgame」から3年。マーベルをはじめ、エンタメから手を引いていた。マーベル映画(MCU)にいたっては当時の全20作品に加えドラマシリーズまでみていた。展示会にも行っていたほど。26年間、情報の受け手だった。コロナを機に発信者、創造者になる必要性を感じ、受信や消費を控えるようにした。スパイダーマンもブラックウィドウも見なかった。ドラマシリーズもすべてやめた。
そんな中でのBlack Panther。「公開された」との情報を目にして今日11月20日に観覧。
生まれて初めて映画のレビューを書き留めようと思う。
見た理由は2つ。
- 前作(2018年)で主演俳優であったチャドウィックボーズマン Chadwick Bosemanが2020年にガンで亡くなった。その代役をたてていないと聞いていて、どうなるか興味があった。
- 近代史とは技術力とエゴにより白人が黒人を虐げてきた歴史だ。ここ数年をとっても映画界で人種の扱いが取り沙汰されている。
そんな中で前作「Black Panther」がありとあらゆるスーパーヒーロー映画の記録を寄せつけず歴代興行収入ランキング3位となっていた。人類史の1つの立ち位置として興味があった。
全米2018年時点 1位スターウォーズ 2位アバター 4位タイタニック
ここからは内容に沿っていく。ネタバレはできるだけ控えるが、これから劇場に足を運ぶ方はまた後ほど。
はじめに
感染症が懸念される中、完成させた製作陣、エンタメ関係者に感謝を記したい。他の撮影現場では、トムクルーズがこの渦中に感染対策ルールを破ったスタッフに激怒したというニュースがあった。この緊張感の中での撮影の苦労は想像に容易い。
著者は作品の良し悪しを断言しない。わたしは映画を作ることができない。見た作品はすべて受け入れ、考える材料とする。その作品が星5つか1つかは議論しない。すべてを尊敬している。
人は新しいものを受け入れにくい。したがって続編というのは常に批評される。だが時間の経過とともに受け入れられていく。スターウォーズは旧3部作・新3部作・ディズニー3部作が存在し、新3部作はディズニー3部作ができるまで批評の対象であった。時間の経過とともに対象が置き換わった。批評家とは批評することしかできないため、そんなものである。
本題 Black Panther Wakanda Forever
これは本シリーズの2作目にあたる。今日11月20日の観覧にあたり、昨日19日に前作を再視聴しておいた。主人公役がこの時すでに闘病中であったことを考えると当時とは違った感情が芽生える。
1作目はセオリー通りシンプル。王族とそれを忌み嫌う2者間の争い。
難しい「2作目」
2作目は1作目に捻りを加えなければいけないという宿命がある。今作では時勢に沿うものも合わせた3つの要素が絡みあっている。
- 資源
- 守護
- 成長
資源と守護
アフリカ大陸に位置する「ワカンダ国」は太古の昔に隕石の落下から銀河最強の鉱物を手にし、地球上で最高の技術力を有していた。1作目/前作の終わりまではその事実を技術力でひた隠し、資源を他国から守っていた。しかし、隠し続けていたことにより歪みが生じ、ワカンダ国王は開国を決意する。
ここから本作に入る。開国を宣言したが世界は依然混沌としたままである。新技術は脅威とされ、アメリカ、フランスをはじめとした列強から「なぜ資源を共有しないのか」と国王は非難される。国王は資本主義国家の代表たちに対して「先日我が国の施設がお前らに襲われた。お前らに任せられるか。」と言い返す。
これはマーベル映画(MCU)2作目「アイアンマン2」と全く同じ流れである。アイアンマンという国を守ることも脅かすこともできる新たな力に対し米国は避難し、議会に当人を召喚し支配下に置こうとした。だが、本人は「お前らもいま同じものを作ろうとしてるだろ。綺麗ごとを言うな。」と言い返す。
各国は最強の鉱物の存在を知ってから、世界中を掘削し始めていた。そこで新たな事実が判明する。「地下水中国家にも全く同じ鉱物があるようだ。」
最強鉱物を持つ2国間首脳会談。
水中国家「我々は数世紀密かに暮らしていた。地上民に完全に見つかるくらいなら、攻められる前にすべて焼き払う。ワカンダ国王も協力しろ。協力しなければ、まずお前の国から根絶やしにする。」
ワカンダ国王「、、、」
勝手だがこの状況は非常にメッセージ性を感じた。2022年現在ロシア、ウクライナ間で戦争が行われている。映画は2021年の段階でほぼ完成しているので、その為の映画ではないことは承知している。だが人類史とは資源戦争である。
人は平等ではない。生まれた土地に資源、水があれば裕福である。昔から人は田んぼや穀物を育成するための水を止められると下流民と上流民が争った。今世紀でも中国はアジアを支配する為、上流に住む民族を迫害し続けている。「世界最大の水源は中国のもの」と利権を主張し、アジア諸国を傘下に置くためだ。
2022年11月現在のヘッドラインも歴史を辿っている。SHEINという格安アパレルブランドが世界中で爆発的にヒットしている。格安なのは新興民族を1日1円程度で雇い服を製造しているためであるとの話がでている。奴隷と同じ扱いだ。日本でもユニクロが関与を指摘され問題となっていた過去がある。
本作はアメコミ(アメリカのコミックス)を元とした映画だが今回アメリカはしっかりと完全に悪役となっていた。「なんとしても鉱物を手に入れて世界を支配したい」と。
劇中では前作より「白人いじり」が何度かある。「また白人じゃん」というノリだ。ほかにも「銃」や「iphone」を”primitive”と揶揄する。原始的、古い、ダサいという意味。これは人類史への皮肉。
黒人は奴隷としてヨーロッパ人に「銃」と引き換えに売買され綿花とともに三角貿易の一部とされていた。それに対し作中で彼らは地球上最高の技術を有している。
爽快だ。
水中国家は世界征服ができたとしてもしなかった。地上に一時出た時には奴隷制度を目にした経験もある。そんなことをする地上民に襲われそうになるなら、先に潰すと宣言する。
列強各国が新技術を求めるのも当たり前だ。他国に先を越されたらやられてしまう。国は他国と対等になりながら、常に頭ひとつ抜ける方法を模索している。出遅れた瞬間に支配下となってしまう。この恐怖から逃れるためには、それを手中に収めるか根絶す必要がある。考える余地はない。
これは現実世界がそのまま表されている。現代は核抑止力によって世界が平和っぽく保たれている。打ったら打ち返すと牽制しあい均衡している。核を持てばある種対等な立場につけるとも言える。そのため日本の隣国はミサイル開発に躍起になっている。資源とはそのような力を有する。これらの考えはいたって合理的なのである。
「水」は特に貴重だ。日本は幸いにも小さい島国で「水」を争う相手がいなかった。なぜ争うのか。それは人類が知能をもってしまったからである。他者を虐げることも、富を蓄えることも覚えてしまった。未来を恐れることも。これにより現在でも資源を奪いあう。悪いのはロシアでもウクライナでもない。「対等を維持しつつ相手の上に立たなければ下となってしまう」ことを恐れている人間である。人間が知能をもつ限りこれは終わらない。わたしはいかなる国の肩も持たない。鑑賞中こんなことを考えていて虚無感に襲われた。
しかし、光もある。
成長
前作では伝統を軽んじる少女が現れる。保護者の優しさに助けられながら、自由奔放に生きている。ところが、本作で突然責任を負うことになる。
大いなる力には、大いなる責任が伴う
スパイダーマンのセリフが脳裏をよぎる。
少女は責任を負いながらも、愛するものを失った感情に任せて暴走する。しかし、最後に世界を思い責任感をもって成長をとげる。生きている限りは失うことを繰り返しながら、心は成長する。新しいものも常に生まれてくる。
若さだけが世界を変えられる。年を重ねると保守的になる。人間の本能としてこれは証明されている。オバマ前大統領やイーロンマスクも同様の言葉を残している。仕方がない。若さと柔軟性を武器に少女は変化を起こしてきた。
伝統や儀式は煩わしい。軽んじたくなる気持ちもわかる。だが、その儀式一つで人が集まる。なにかが終わって、なにかが始まる。
儀式を軽んじていた少女が儀式を行い過去に区切りをつける。儀式での新しい出会いに笑顔を浮かべながらエンドロールを迎える。これからの世界に希望をもって。
どんなに古臭い伝統や儀式だって、合理的でなくたって、人間として生きている以上それもいいもんだ。
人生の喜怒哀楽を感じた作品だった。
今を楽しもう。
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